北海道でSDGsの目標達成に貢献する企業・団体 北海道でSDGsの目標達成に貢献する【溝端紙工印刷株式会社】(遠軽町)

2024年2月12日 公開

北海道で割りばしを製造している工場は、現在ひとつだけです。それが遠軽町にある溝端紙工印刷株式会社割箸工場です。北海道は、森林の面積が54万haで、北海道の土地面積(北方領土を除く)の70.6%、全国の森林面積に占める割合は22.1%(北海道データブック2023より)と森林資源に恵まれており、かつては割りばしを製造する工場もたくさんありました。それが中国産などの安い輸入物に押されるなどしてどんどん廃業していったのです。さらに割りばしは一時、その使い捨てという側面もあって、森林を破壊しているとして批判された存在でもありました。ところが、昨今は間伐材や端材を活用して作られる地球環境に優しい、SDGs的存在として注目すべき存在となっています。溝端紙工印刷割箸工場・工場長の斉藤敏紀さんに、割りばしを巡るお話しを伺いました。

お世話になった遠軽町で割りばし製造を続けて雇用を維持する。

溝端紙工印刷の割箸工場は、最初は1983年に北海道溝端紙工印刷(のちに溝端紙工印刷と統合)がはし袋を印刷する工場としてスタートしています。その頃は近隣に割りばし工場がたくさんあり、箸袋のニーズがたくさんあったからだそうです。印刷工場が割りばしを製造する工場になったのは2008年とのことで、そのきっかけには、遠軽町や働く人たちへの熱い思いが込められていたのでした。

2007年、近隣の割りばし工場の廃業によりはし袋の受注が減ってしまったため、溝端紙工印刷の印刷工場はニーズのある千歳に移転させることになりました。その際「遠軽町に残される社員の雇用を守りたい。そしてこれまで何十年もお世話になった遠軽町をそう簡単に捨てるわけにはいかない。そんな現会長の熱い思いが出発点となりました」と斉藤さん。そこで地元の木材を使った割りばしを自社で製造し、はし袋とともに提供していこうということになったというのが、割りばし製造開始に至った流れなのです。

その際工場長となった斉藤さんは、石川県の割り箸トップメーカーに勉強に行ったり、北海道の割りばし工場にいろいろなアドバイスを求めて奮闘しました。しかし、割りばし製造の機械や技術は、これまでそれぞれの工場が独自に積み上げて出来上がっていたもので、自分たちのものにするのは大変な苦労があったとのこと。そのため、割りばし工場自体の赤字は長年続いていたのですが、2023年の前期にようやく黒字化できたとのこと。北海道で割りばしビジネス自体が持続可能な状態になったのです。

その地域に根付いた産業が継続して雇用を守る。そんな溝端紙工印刷の割箸工場が製造を続けること自体が、目標8<働きがいも経済成長も>に直結しています。

地元遠軽町の間伐材を使った割りばしで、森林の循環サイクルを促す。

溝端紙工印刷の割りばしは、遠軽町のトドマツ間伐材を使った天削箸で、目標15<陸の豊さを守ろう>そのものの商品です。間伐材を使うことで持続可能な森林経営に役立ち、加えて地元の間伐材なので運搬時の排出CO2も少ないのです。そして2009年からは、割りばしに使った木材分を植樹活動で森に還元する活動を開始。木を使って植えてという持続可能な生産・消費形態をつくる、目標目標12<つくる責任 つかう責任>への取り組みです。

植樹活動は2019年からは遠軽町と連携した「北海道割りばしの森プロジェクト」に発展させています。「遠軽町産の苗木を使い、小中学生からお年寄りまで植樹に参加してもらい、町民と一緒に森を守る活動です。木を10使って、10返すことはできないかもしれない。それでも全国の6割の森が整備を必要としているなか、私たちが少しでも森を買って整備することでその問題の解決に少し近づくことができます。なおかつ新しく植えた木は古い木よりもCO2の吸収力が高いという結果も出ているため、古い木は切って割りばしにして、その分木を植えて、新しい山に変えていこうというとしているんです」と斉藤さん。

地域の社会課題を、関係者とともに解決へ向かって行動し、森林資源の持続可能な利用を割りばしビジネスの中に取り込んでいるのです。溝端紙工印刷の割りばしは、「SDGs的な割りばし」と言っていいでしょう。

溝端紙工印刷株式会社 割箸工場

北海道紋別郡遠軽町生田原安国242-5
TEL.0158-46-2046
https://www.msp.co.jp/

北海道でSDGsの目標達成に貢献する企業・団体

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