
札幌中心部から車を走らせること約1時間。黄金の小麦畑が地平線の向こうまで広がる先に、巨大な倉庫や建物が見えてきました。
ここが農事組合法人勝部農場。175ヘクタール(札幌ドーム約35個分)という実に広大な面積を持ち、小麦の収穫量は日本トップクラスの1000トン超(パン1500万個分)。高いシェアを誇る「ゆめちから」の作付では日本一を誇ります。
これだけの面積の畑と聞くと、多くの人員で朝から晩まで汗を流し…という姿を思い浮かべてしまいますが、なんと従業員は代表を含めて3人と収穫時期の協力農家とアルバイトのみ。その秘密は、欧米から輸入した世界最大クラスの耕作機。高さは4〜5メートル、幅は11メートルにも及び、わずか数日で収穫を終えてしまうといいます。
大規模農場の発端となったのは、現在の農場主である勝部佳文さんの祖父が1950年代、小麦のみの栽培に絞り「家を買えるほどの価格」で大型機械の導入に踏み切ったこと。まだ馬に鋤を引かせていた時代に、欧米の最先端に目を向けていたといいます。
ここで働く2人に、大規模農場ならではの面白さや働き方について、お話を伺いました。
美しい畑をつくる。その唯一無二の技術を学べます。
加地裕樹(38歳/職歴10年)
病院での仕事を経て、20代後半で勝部農場に入りました。初めて訪れた時は、「スゴいところに来ちゃったな」と(笑)。こんなにも広い畑を一体どうやって管理できるようになるんだろうかって。でも期待しかなかったですよ。珍しい機械もいっぱいあるし、全国的に知られるほどレベルが高いですから。
当初はほとんど知識はありませんでしたが、社長は本当に粘り強く教えてくれました。例えば収穫した小麦1トンの袋をフォークリフトで均一に積み上げていく仕事ではわざわざ遅くまで残って教えてくれたり、大型重機の操縦では隣に座って操作を教えてくれたり。そのおかげで今は任せてもらえた作業の大体は一人でこなせるようになりました。
この美しい畑を見ていただけたら分かると思いますが…勝部農場にはどんな仕事も美しく丁寧に仕上げるという、代表なりの哲学があります。雑な仕事をすると、必ず後で返ってくるんだ、と。だから、仕事に必要なのは体力じゃなく、技術や感覚なんです。畑を綺麗に作る感覚とか、土をどう動かせばいいかとか…。それは1年2年じゃ養われないけど、何度も挑戦して初めて体で覚えていくものなんじゃないでしょうか。
冬には1ヵ月の長期休暇もあり、働く環境面も「欧米並み」です。
原田寿博(40歳/職歴1年)
代表とは前職のJA時代からお付き合いがあり、お人柄や熱意を尊敬していました。一般的に田畑は、規模が大きくなるほど細部まで目が届かなくなりますが、勝部さんは小さな雑草や、作物のごくわずかな変化にも気が付くんです。
入社して驚いたのは、やはり大規模農業のスケール感。畑は175haにも及びますが、通常1週間はかかる作業を巨大な耕作機械を使ってわずか3日から5日ほどで終わらせてしまうんです。
弊社の耕作機械は技術面でもハイテクで、例えばトラクターはボタンを押せば自動で進んでくれるので、車の運転よりラクと言っても過言ではありません。学生さんも心配いらないでしょう。
小麦は秋に種蒔きを行い、翌年の夏に収穫します。7月の収穫から9月の種蒔きの時期は繁忙期で、アルバイトやサポーターの方と共に一斉に仕事を進めます。作業が追いつかない時は残業が発生して、お休みもほとんどなく…と忙しい一方、10月上旬に全ての作業を終えると翌年4月までの半年間は農閑期。仕事ものんびりできて、週休2日制になり残業もなく、12月下旬からは約1ヵ月の休暇も貰えます。まるで欧米ですよね(笑)
家庭との両立も実現。農業ならではのやりがいで、稼げる喜びを実感しています。
(加地さん)働き方も最近は変わりました。実は過去に一度、家庭との両立が難しく退職したんですが「やっぱり自分のしたい仕事はこっちだな」と思い戻ったんです。この出来事を機に働き方を改善してくれて、今は両立もできてますし、お給料も時期を問わず安定支給で、同世代よりもずっと良い方だと思います。やりたい仕事をして、それなりのお給料を貰えたら、こんな良いことはないですよね。僕が達成感を抱くのは、種を蒔く前の真っ平らな畑を見た時。土を綺麗に慣らして、耕して、美しい風景をつくる。ある種、芸術を描くような仕事なんです。時々畑を見ながら「綺麗だなあ」なんて心の中で呟いてます(笑)。
(原田さん)
農作業以外の仕事についても、少人数なので密にコミュニケーションを取りながらじっくりと教えてくれます。代表は優しくて、例えば僕が作業機を壊してしまった時も怒ることはなく「わざとじゃないからね」と接してくれました。入社にあたっては体力も知識も必要ないと思います。プロ意識が求められる職場ではありますが、はじめはとにかく前向きに、興味を持って頂ければ大丈夫。サラリーマンとは違いますが、唯一無二の面白さを実感して欲しいです。