クロス職人の歴史は古く、かつては屏風(びょうぶ)やふすま、障子をつくる職人であったとされています。
そんな伝統の技術と向き合いながら、新たな道を切り開こうとしているのがエスエス和晃の斉藤知也社長。35歳という若さで会社を率いる斉藤社長は、技術を重視しながらも働き方や人材育成に新たな発想を取り入れています。
伝統ある職人技がどのように未来へつながっていくのか、経営者と職人、両方の視点からお届けします。
全員が未経験。国家資格取得を目標に時間をかけて育てます。
代表取締役社長 斉藤知也さん(35歳)
ー御社はニセコや札幌の高級ホテルも手掛けられていますね。
大手ゼネコンが発注元のおかげで比較的大きな工事が多く、インバウンドブームでホテル建設が重なりました。ホテル以外では病院の工事や老人ホーム、アパート・マンションの修繕なども手掛けています。どちらかというと公共より民間工事が中心で、偏りがないため安定しています。
ー技術力が評価されての事とも思います
お客様には単に「仕事が綺麗」「丁寧」といった曖昧な表現ではなく、国家資格である表装(ひょうそう)技能士が在籍していると伝え、客観的に技術力を証明しています。
ーどのように育成しているのでしょうか?
当社は全員が未経験から入社していますが、現場で経験を積み、表装技能士の資格取得を目標に技術を習得しています。取得が難しい資格ではありますが、取得費用は会社が全額負担、技術面も全力でサポートします。「先輩の技を見て盗め」という文化は過去の話。若手や未経験者に寄り添った教え方を心がけ、慣れてからは積極的に手を動かしながら覚えてもらいます。焦ったところですぐに習得できる技術ではないので、時間をかけて育成する方針です。
自分を入れて半数が30代。若い会社だからこそ一人ひとりを大切にしています。
ー働き方改革にも積極的ですね
数年前に父から会社を継いだ際に、これからの働き方はプライベートの充実も必須だと感じ、週休2日制を導入しました。最近では発注元が土日休みを徹底するようになったので必然的に当社も休みです。残業も基本的には数時間以内しかありません。
ー少数精鋭にもこだわりがあるのでしょうか
社員5人の小さな会社ですが、目の届く人数だからこそ高品質に、効率的な仕事に取り組めると考えています。クロス貼りは大きな現場でも、1人かペアで取り組むのが基本です。チームプレーよりも、個人の技術にかかっているからこそ、一人ひとりを大切にしていきたいという想いです。特にウチは私を入れて30代が3人と、まだまだ若い会社ですからね。
ー この仕事ならではの面白さはどこにありますか?
何より「達成感」ではないでしょうか。私たちの仕事は建物の最後の「仕上げ」部分なので、完成する姿を見られるのが魅力です。味気ない壁が綺麗になり、塗装や床も仕上がり完成した状態はまさに、職人たちの汗と努力の結晶。人々の仕事の集大成を目の当たりにする喜びは、何事にも代えられないと思います。
経験ゼロからの入社。やりがいも働きやすさも魅力です!
職人 村松宏紀さん(31歳・入社2年目)
ー入社のきっかけは?
建設系の仕事を転々としていましたが、良い職場とは巡り会えず…。クロス職人の仕事に興味が沸き、働きやすそうな当社を選びました。
ーどう技を習得しましたか?
最初は右も左も全く分からない状態です。先輩方に助けてもらいながら、実際に作業している様子を見て、手の動かし方や道具の持ち方を細かく教えてもらい、自分の手を動かして学びました。
ー入社後のギャップは?
同じ現場がないのが難しさで、同時に面白さでもあります。例えば新築と張り替えでは全く仕事の種類が異なり、特に張り替えでは古い建材を丁寧に扱う必要があり、いかに下地を綺麗にならすかの処理が大切になんです。
ー先輩方との関係はいかがですか?
とても優しい先輩ばかりで、たくさん失敗しましたが、いつも「新人だから仕方ない」と温かく見守ってくれます。プライベートの相談も付き合ってくれます(笑)
ー会社の働きやすい所は?
週休2日制で残業も少ないので、プライベートをしっかり確保できるところ。おかげで旅行やライブに行く機会が増えてリフレッシュできます!
ーやりがいを教えてください。
綺麗にシワなく貼り終えた時の達成感がたまりません!