日栄興業株式会社は、JRや道路の橋をかけたり、水害からマチを守るための施設に機械を据え付けたりするのが得意中の得意。ここ最近、建設業界もかつてのイメージとは変わりつつありますが、ピンポイントレポのインタビューに同社を訪ねてみると、あちらこちらから「ありがとう」「助かるよ」といったあたたかな言葉が聞こえてきました。スタッフの表情も和やかで、飛び抜けたやわらかさを感じます。
「ようこそ」と出迎えてくれたのは代表取締役の追分伸大さんと専務取締役の石井健也さん。お二人とも40代と建設会社の経営陣としては非常に若く、企業のトップとナンバー2にもかかわらず、威圧感はまったく感じられません。なるほど、同社にやわらかい空気が流れている秘密は、どうやら追分さんと石井さんの人柄にありそう。さっそく、インタビューから紐解いていきましょう。
社長らしい社長ではないけれど、
このスタンスをリスペクトしてもらえると嬉しいです。
代表取締役/追分伸大
追分さんが入社したのは平成14年。当初は現場で経験を積みましたが、半年ほどで提出書類の作成や資材・機材の手配などにあたる事務方の業務部に異動しました。
「前社長が高齢をきっかけに引退を考えるようになり、3年ほど前に私に後任の白羽の矢が立ちました。同族でもないので正直、寝耳に水(笑)。ただ、業務部は社内各所と壁を作らずに連携しなければスムーズに仕事が回らず、顧客や協力会社とのやり取りも多いため、コミュニケーション面を期待されたのだと思います」
追分さんは前社長のサポートを受けながら、トップになるための体制を社内外で築いていったとか。業界内では40代の社長は珍しく、「レアキャラ」として顔が知られるようになったのもメリットだと笑います。
「職人の中には大先輩もいるため、業務命令のような物言いでは関係性が悪くなります。そのため、頼み事は『お願いできますか?』と丁寧な言葉を使う一方、まだ業務部の仕事も兼任しているので、『社長、ボルト頼んどいて』と声をかけられることも(笑)。社長然とはしていませんが、このスタンスをリスペクトしてもらっていると…いいですよね」
感謝の言葉を伝え、お互い様のスタンスで付き合うことが
ビジネスや社内の雰囲気を好循環させています。
専務取締役/石井健也
石井さんも、追分さんが社長になったタイミングで専務に就任。とはいえ、現在も工事計画や工法の策定、見積もりの作成、顧客との折衝などバリバリのプレイヤーでもあります。
「若いころの建設業界といえばピリピリムードが当たり前。今でも上の世代が威圧的というのは珍しくないと思います。ただ、10年ほど前からお客様と接するようになったことで、『上の世代と同じスタンスは顧客からも求められていない』と感じるようになりました」
ビジネスにおいて、料金を支払う側と受け取る側は上下関係になりがち。けれど、同社は橋の架設や機械設置の高い技術を持っていることもあり、顧客から「助け合わないと」とフラットに付き合えるようになっているそうです。
「それは協力会社さんも社員に対しても同様。『やってくれたら助かるな。でも、何かあったら絶対に助けるよ』『効率が上がる道具があるなら買っていいよ』といつも言葉にしています。ベテランさんにも新人をそう育ててほしいと伝えると、『石井がいうなら』と納得してくれましたね」
感謝や肯定、お互い様のスタンスがビジネスを円滑に回し、社内のやわらかい雰囲気を作っているのですね。
褒められるのって素直にうれしいですし、
ムダな「圧」もないのでのびのび…時にゆるく働けます。
工事長/木村輝紀
木村さんの前職は日栄興業と同じような工事を手がける建設会社。少人数制で常に同じメンバーと働いていたため、人間関係の悪化から転職を決めたといいます。
「知り合いから紹介されたのが当社。僕自身は経験者にもかかわらず、皆が教えたがり、面倒見たがりなことに驚きました。これは若い世代が入社したら、すぐに伸びるだろうと感じたことを覚えています」
高校卒業後、建設業界一筋だという木村さん。一般には「仕事はやって当たり前」の世界だと思っていたそうですが、事あるごとに感謝の言葉を伝えられることにも喜びを感じたそうです。
「道具を取って渡したら『ありがとう』、工事が完了した現場を見ては『よく頑張ったな』と褒められます。これって素直に嬉しいんですよね。今は工事長として先輩の職人さんに指示することもありますが、『お客さんとのやり取りをやってくれているから』とイヤな顔ひとつせずに作業してくれます」
仕事の結果が給与に反映され、全員がお互い様で働いているため有給も使い切れる環境。「上からの無駄な圧力もないので、のびのびと…時にゆるく働けるんですよね」と満面の笑みを見せてくれました。