北海道発!商品誕生エピソード 北海道発!商品誕生エピソード【カカオ豆の特徴を引き出すチョコレート作り。SATURDAYS CHOCOLATE/株式会社天然生活 サタデイズ事業部(札幌市)】

2021年7月26日 公開

商品名は「ウガンダ72」や「インドネシア70」など、カカオ豆の産地が分かりやすいネーミング。

株式会社天然生活が運営する「SATURDAYS」はカカオ豆からチョコレートを作り上げる「ビーン・トゥ・バー」をいち早く手掛け、小規模で手作業を大切にする「スモールバッチ」を貫くお店。その魅力を代表取締役の秋元力さんにお伺いしました。

レシピも文献もないゼロからの挑戦。

株式会社天然生活 代表取締役/秋元 力さん

秋元さんはもともと物作りが好きで、武蔵野美術大学に進んだ後はインテリアや建築の仕事に携わりました。
「家業を継ぐために札幌に戻ってきましたが、物作りにかかわりたいという思いが強く、北海道産のお菓子や食品を開発・販売する会社を立ち上げました」
とはいえ、北海道の食材だけにこだわっていても、他社と差別化しにくく、抜きんでた商品を手掛けることは難しいと実感したそうです。そこで、秋元さんが目を向けたのは世界のムーブメントでした。
「1990年にNYでクラフトビールが台頭して以来、サードウェーブコーヒーをはじめとするクラフトブームが世界中で巻き起こりました。そんな折、アメリカの若者が中南米でカカオ豆を買い付け、自らチョコレートを作り始めたという雑誌記事に驚かされたんです」
当時の日本では、カカオ豆からチョコレートを製造しているのは大手メーカーに限られ、ごく少数の愛好家が趣味として作る程度。「レシピも文献もない」という逆境にチャレンジ精神がかき立てられ、秋元さんは「ビーン・トゥ・バー」に乗り出しました。

カカオ豆の個性に合わせ、焙煎や、すり潰しの方法を調整。

秋元さんは2014年から「ビーン・トゥ・バー」のリサーチを始め、アメリカのスモールバッチ(小規模生産工場)も訪ねました。NPO法人や海外青年協力隊から少量のカカオ豆を入手し、試行錯誤すること約1年、ようやく商品化に至ったと言います。
「カカオ豆は産地や品種によって、味わいも香りも異なる『農作物』です。年に一度は海外の生産者を訪ね、一人ひとりの思いにも触れたからこそ、特徴を生かしたチョコレート作りを心掛けています。乳化剤や香料は一切加えず、単一のカカオ豆と砂糖のみで商品を仕上げるのもこだわりの一つです」
「SATURDAYS」ではカカオ豆の個性に合わせて焙煎する温度やスチームの有無、コンチング(すり潰す工程)の時間などを調整。更に、チョコレートのブロックを温度調整しながら少しずつ固めるテンパリングを手作業で行うことで、美しいつやや程良い歯触り、滑らかな口溶けを生み出しています。
「カカオ豆は比較的貧しい国で生産され、小さな子どもが働かざるを得ない農場もあるという暗い側面もあります。良質なカカオ豆を市場価格よりも高く購入し、パッケージに産地を明記することで生産物の価値も押し上げたいと考えています」

目指すはメジャーではなく、最高のインディーズブランド。

「SATURDAYS」をオープンした2015年当初は5種類ほどだったチョコレートも、今や15種類にまで増え、季節限定商品も展開しています。最近はチョコレートに北海道の特色も取り入れるようにもなりました。
「例えば、北見のハッカ油をブレンドしたり、近所のお茶屋さんとコラボレーションして玄米パフを練り込んだり、おいしさの広がりを実感しています」
カカオ豆は農産物だからこそ、その年によっても味わいが変わるもの。メンバーで食味を繰り返しながら作り方も微調整することで、常に変化が生まれ、お客様の楽しみにつながっています。
「チョコレートは夏場の消費が落ち込む商品です。私たちはカフェで飲み物やソフトクリームも提供することで、通年でカカオ豆の流通を下支えしたいとも考えています。このコロナ禍では、ECサイトを自分たちで作り上げ、ネット販売する取り組みも始めました」
最後に今後の展開を尋ねると、秋元さんはほほ笑みながらこう答えてくれました。
「スモールバッチとして、社員やアルバイトスタッフが幸せに生きられる規模で十分だと思っています。目指すのはメジャーではなく、最高のインディーズブランドですね」

ここがこだわり!開発のポイント

ほぼすべての工程を手作業で。
カカオ豆の特性に合わせて焙煎するところからチョコレートバーに成形するまで、ほぼすべての工程を手作業で行っています。特に美しいつやや滑らかな口溶けを生み出すテンパリング(温度調整作業)がポイント。
世界中からカカオ豆を厳選。
日本でも有名なアフリカの「ガーナ」をはじめ、優しい酸味とフルーツ感が香る「インドネシア」、紅茶やシナモンのような香りとミルキーな甘さが楽しめる「スリランカ」など、世界中のカカオ豆をセレクト。
カカオ豆はシングルオリジン。
「SATURDAYS」はカカオ豆をブレンドしない「シングルオリジン」によって、本来の風味を生み出しています。良質なカカオ豆を育ててくれる生産者の価値を高めるためにも、産地をパッケージに表記。

【ショップ】
SATURDAYS Chocolate Factory & Cafe

カフェを併設している「ビーン・トゥ・バー」の工房。商品を購入できる他、チョコレートで作るドリンクやスイーツも楽しめる空間に。
北海道札幌市中央区南2条東2丁目7-1 SALMON1F
TEL.011-208-2750
10:00〜18:30、水曜定休
https://www.saturdayschocolate.com/

北海道発!商品誕生エピソード

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