大学での講師や企業顧問としても活躍している川口さん。「『北海道旬得便』が、弊社がメインで取り扱ってきた物販、物流といったビジネスからの転換にもつながるのではと期待しています」
川口さんは、北海学園大学卒業後、コンサルティング系会計事務所を経て2007年、26歳という若さでブエングストを創業。当時、多くの人に浸透し始めていたインターネットオークションに商機を見いだし、出品代行サービスを開始しました。現在は事業を拡大し、EC(通販)サイトの運営、ウェブサイトの制作のほか、アマゾン・楽天などへの販売代行、商品保管・物流サービス、家電製品の販売、コンサルティングなど幅広い業務を行なっています。しかし、一見すると農業とのかかわりは少なそうですが、なぜこのようなサービスを開始したのでしょうか。
「元々、仕事でのつながりから道内の観光協会や飲食店経営者達と交流がありました。そうした方々から、余った食材を利用した商品開発や、食材そのもののネット販売ができないかと相談を受けたのがきっかけです」
新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた観光業や飲食業。それに連なるように農業、漁業などの一次産業も卸売先が減少したことで苦境に陥っているというのが相談の理由でした。更に、大量の食材が倉庫や冷蔵庫に眠っていたり、最悪の場合は捨てられていたりするというのです。
インターネットオークションでの販売代行やリサイクルショップの運営を行なっていたこともあり「もったいない」という意識は強かったという川口さん。加えて、IT化が遅れている産業へのサポートも行いたいと考えていたそう。そこで、ECサイトのノウハウを生かして、まずは農業を支援する方法を模索します。
「多くの業態がテイクアウトやインターネット販売といった非接触での販売方法にシフトする中、農家の大半は卸売や対面販売など従来型が主流で、ECサイトの運営ノウハウといったITリテラシーを持つ生産者は多くありません。また、受発注や発送まで手を回す時間も人員もないというのが現実でした」