北海道ビジネスニュース 北海道ビジネスニュース【ふくしのよろずや 神内商店合同会社】

2021年1月11日 公開

北海道の福祉をもっと元気にするために、現場の問題解決にひた走る「なんでも屋」。

福祉業界で今、注目を集めているのが「ふくしのよろずや神内商店合同会社」の神内秀之介さん。北海道の福祉を元気にすることを目標に、経営や人材育成のコンサルティング、福祉現場へのIT技術の導入に力を注いでいます。
「自分の頭とパソコンだけあればどこでも働けるんです」と神内さん。道内各地を飛び回ることも多く、場所を選ばず仕事に取り組んでいる姿は、福祉業界の人というよりITワーカーのようです。

ボランティアから飛び込んだ福祉の世界。

「福祉の良い面も悪い面も見てきました」と笑う神内さん。札幌で生まれ、高校を卒業後に上京し、日本大学文理学部で哲学を専攻。卒業後は就職活動をせずにUターンした後、興味のあった知的障がい者の作業所にボランティアへ。その活躍ぶりが評価され、札幌の近郊にある知的障がい者厚生授産施設へと移ります。高齢者の福祉も学びたいと考えた神内さんは、札幌市内の社会福祉法人に介護士として入社しました。その後20年の間に現場だけでなく、運営側にも籍を置き、経営やマネジメントに携わると、福祉業界が抱える多くの問題を解決するためのヒントが隠れていたことに気付いたそうです。
「福祉や介護事業所の運営は施設長など現場側が仕切るのが一般的です。しかし、施設長が異動や転職をしてしまうと、それまで築いたノウハウやルールが継承されないケースが多くありました。そこで運営側と現場側を分け、きちんとしたルールやプランを運営側がつくることや、両者をつなぐマネージャーを育てることで、経営や人員不足、現場の負担といった問題を解決できることに気付いたのです」。
さらなる知識を身に付けるべく、働きながら北海道大学公共政策大学院の修士課程を終了。2016年に新たに誕生した介護福祉経営士の1級も取得します。苦労をいとわず経験を積んだ神内さんは、自らのノウハウや知識、人脈を業界全体へと還元するため、勤めていた特養老人ホームの施設長を辞して2019年、独立の道へ。「どうしても一か所にいると視野が狭くなりますし、業界全体を良い方向に導きたいと考えました。そのための選択肢は独立しかないと思ったんです」。

「アンパンマン活動」と、ITの活用でより良い業界に。

現在の神内さんの仕事は、福祉の経営やコンプライアンスなどのコンサルティング、講演会、セミナーの開催が中心。「目の前で困っている人に、自分のアタマにある知恵をヒョイっと分けている、そんなイメージから周囲の人には『アンパンマン活動』なんて評されています(笑)」
「コンサルティングで増えているのがコンプライアンスのご相談です。近年はさまざまな業種が福祉の経営に参入していますが、経営について詳しい一方で法律や規則に疎い会社が多いのです。逆に長く福祉に携わっている団体や企業では、よく言われるように経営、人材育成の不足などの問題を抱えています」。
さらに注目したいのが、AI・ICTといったIT技術の導入サポート事業。最新のテクノロジーを利用することで、現場の負担の軽減や業務の効率化、データの蓄積などさまざまなメリットが生まれるそうです。「福祉は医療と違って科学的なエビデンスではなく、過去の事例や考察、利用者の経歴や観察に応じてプランを決定します。個々のデータを蓄積していけば、事業所内での情報共有はもちろん、ケアプランの立案の元となる〝宝の山〟となるはずです」。
他にも福祉業界に人材を増やす活動や、社会から孤立した人をなくすための行動など、ボランティアで取り組んでいることも多いのだとか。さらに、北海道社会福祉士会会長や、各福祉団体の理事、大学の非常勤講師など数多く顔を持つ神内さん。「僕のようにフラフラした人間が必要なのかもしれませんね」と笑います。

誰もが気軽に介護士になれば、この国の問題が解決する。

福祉業界の未来については次のように話します。「多くの団体や企業では国からのお金や税金が投入されているという性格上、お金を稼ぐことに負い目を感じている人も多くいます。今後さらなる他業種の参入や連携で、福祉の『商品化』が進み、競争が起きると、そうした負い目がなくなります。その先に、業界全体の経営環境やサービスの向上があるのではと見ています」。
また、今以上に問題が大きくなるのが介護現場の人員不足。介護が必要な高齢者の人数は、2040年にピークを迎えて現在より5割増の約950万人になると言われています。加えて働き手となる若者の人口が減少するため、より多くの介護士が必要となります。
「『お年寄りが好き』といった軽い理由でもいいので一度、働いてみるといいでしょう。どんな人でも、介護される側になる時が必ず来ます。親や親族の介護にも直面するでしょう。そんな時、自分が介護士になった経験は必ず生きるはず。資格を持たなくても働ける介護助手などの仕事もありますし、やってみて合わなければ辞めればいいんです。また福祉業界は転職や出戻りにも寛容で、働き方も昔からは変わりましたので、一度は辞めた方でも、どんどん再チャレンジしてみてください」。
介護は利用者に真摯に向き合うことで、自分ではできない疑似体験ができるのが魅力と語る神内さん。「経営者も芸能人も必ず介護のお世話になります。そんな人の話を毎日聞くことは、どんな勉強よりも自らの成長につながるはずです」。熱く語る神内さんの目には、福祉業界の明るい未来が見えているようでした。

ふくしのよろずや 神内商店合同会社

法令遵守等の解決、事業運営・管理の解決、学び・育成の解決の3つを基本にコンサルティング業やIT技術の導入を行なっている、福祉業界の「なんでも屋」。
札幌市西区八軒1条西2丁目
https://jinnaisyouten.com/

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