関西の美容の世界から
北海道の食の世界へ
藤田さんのご出身は兵庫県。もともと食べるのが好きで美容師時代から日本各地を食べ歩きしていたといいます。
「いつかは飲食の世界で一旗揚げたい… 心のどこかにそんな思いもありましたね」
全国を訪ね歩く中で強く惹かれたのが北海道。
「料理で比べるとほかの地域も負けていないけれど、素材の質は北海道が断然良い。アスパラ、トウモロコシ、海産物… その一つひとつの旨さに感動し、北海道の飲食の世界に飛びこんでみようと決めたんです」
7年勤めた美容業界を辞め、単身北海道へ。新天地とはいえ知り合いもいない土地に不安は感じなかったのでしょうか。
「北海道の方って関西人とどこか似ているんです。飾らないというか、オープンというか。なので知り合いはいませんでしたが、不安を感じることもなかったですね。多分すぐに友達ができるだろうみたいな(笑)」
こだわりのスープカレーに
心底魅了されて
移住ひと月後に働いたのがカフェ。そこで紹介されたバーに勤務先を移したところで現在の上司でもある村上洋平氏に出会います。
「すでに多店舗展開していた奥芝商店の要として活躍されていました。その仕事ぶりやスタッフを思う人柄に魅了され、スタッフとして働かせてほしいとお願いしたんです」
折しも新店舗となる『奥芝商店おくしばーちゃん』の立ち上げの時。藤田さんはそのオープニングスタッフとして働けることに。
「まさか自分がスープカレーの道に進むとは思ってもいませんでした。それまで数回食べた程度でしたからね。ただ二千匹のエビの頭のだしを毎日とったり、無農薬の道産野菜を仕入れたり、店づくりにも妥協していなかったり… 一つひとつへの圧倒的なこだわりに心底『スゴイ、自分もやってみたい!』と感じるようになったんです」
その店舗では3年勤務。その後本店や駅前店の運営を経験し、半年ほど前から店長として『奥芝商店 実家』の運営を担っています。
転職で知った飲食店経営に
対する自身の意欲
前職の美容師と飲食店の店長職。全く違う仕事にも映りますが、どちらも同じと藤田さん。
「お客様に喜んでいただくという目的は一緒。リピーターを増やすという観点も同じだと思います」
ただ適職という点では今の仕事のほうが性に合っているかも、と笑います。
「一つはスパイスの世界に魅了されたこと。永遠に答えを探すような感覚を味わえたのは奥芝商店に巡り会ったからでしょうね。もうひとつの理由は自分の変化。この仕事に就いて、店の経営とか企業の運営に対する関心がすごく高まったと思います」
かつては漠然と感じていた〝一旗揚げたい〟の思い。しかし今は将来的には必ず自分の店を持ちたいという信念に変わっているよう。
「もちろんまだまだ勉強と経験不足。当面の目標は奥芝商店になくてはならない存在になること。後輩や新人を育てることにも取り組みたいと思っています」