2017/09/11[mon] update

農林漁業の仕事人file【農業/廣船史也さん】

辛いこと、悔しいこともある。
ただそれを軽々超えるほど、農業は面白い。

新篠津つちから農場株式会社 
角山農場長/廣船史也さん

リーマンショックが目を向けさせた農の世界。

涼しさをまとった風が畑を渡っていきます。その土の上に転がるのは黄金に輝くとれたての玉ねぎ。ここは新篠津つちから農場。取材に応じてくれたのは農場長の廣船史也さんです。
「札幌の高校を卒業後、江別の大学で英語英米文学を学びました。大学3年になり就活をはじめましたが、世間は世界的な恐慌となったリーマンショックの真っ最中。人材募集をする企業も少なく、景気の先行きもかなり不透明だったんです」
ならばと廣船さんが目を向けたのは、農業の世界。高校時代からのバイト先に農家の方がたくさん来ており、そのスローライフ的な働き方、生き方に憧れを抱いていたから。
「当初は農家をサポートする農業資材の会社への就職を目指しましたが、『その前に農業そのものを知ってみるべきでは』という周囲のアドバイスもあり、まずは3年間を目標に農業法人で働いてみようと考えました」
さっそく北海道農業の窓口として知られる『農窓(のまど)』へ。そこで紹介されたのが、農業法人の新篠津つちから農場株式会社。経験も知識も体力も…。とにかく何から何までゼロからのスタートでした。

技術者の目、科学者の知識で農業に取り組む。

3年間の勤務予定での入社したが、その間、廣船さんは結婚し家も新築。社長との信頼関係も生まれ、会社の将来のビジョンに心が動かされるようになっていました。
「ただ辛くなかったわけではありません。冬に長い休みがとれるものの春から秋までの休みは週に一日で、例えば飲み会に誘われてもなかなか参加しづらかったり。収入面でも、今も収益に応じたボーナスはありますが、都会のサラリーマンをしていた方がもっと稼げたのでは…と考えたことも正直ありました」
それでも廣船さんは辞めませんでした。なぜなら、そんな迷いを簡単に超えるほど農業がメチャクチャおもしろかったから。
「悪天候や病害虫などのトラブル、人材の配置や防除のタイミング。自らの知識や経験を照らし合わせることで、こうした課題に対応できたときの達成感や、例年以上の収益を実現したりバイヤーさんから『最高の出来』という評価をいただいたときの嬉しさは、言葉にできないほど。この強烈なやりがいを一度味わったら、もう辞めることなんてできません」
3年の節目を超え、勤務は今年で8年目。農の世界には、創意工夫や試行錯誤の余地がまだまだ無限にあると、廣船さん。
「それくらい農業は奥深い。こんな世界に引き込んでくれたリーマンショックに感謝してますよ(笑)」

若くして刺激的な将来が描けるのも魅力。

農の道で生きていこうと決心した背景には、社長の存在もあるとか。
「土壌の見方や防除のノウハウから人材の管理術まで、営農や法人経営のすべてを教えてくれたのが社長でした。社長の『玉ねぎの声を聞け』という言葉は、胸の奥深くに刻まれています」
世襲をする法人も少なくない中、志のあるスタッフにはどんどん仕事を任せていくというのが社長の考え。すでに右腕となっている廣船さんとは、将来の法人経営についても話しているとか。さらにスーツを着て商談に応じたり、来客の対応をすることもめずらしくありません。
「現時点では、この『つちから農場』を継いでいくのか、独立して新たな法人を設立するのか決めていません。もちろんどちらの道に進んでも、社長とはずっと強い絆で繋がっていたいと思います」
困難や課題はあるにせよ、若くしてこんな将来像を描けるのも農業法人の魅力。
「新規就農したい人には、まずは法人で経験を積んでから…と教えてあげたい。その貴重な経験の先にさまざまな道が広がっているんです」
農林漁業の仕事人file
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