応募 志望動機の書き方

志望動機は、採否の判断材料として履歴書のなかで大きなウエイトを占める項目。この志望動機だけで、履歴書全体の印象の60%は決まってしまうといっても過言ではない。大切なのは自分の言葉で、これまでのキャリアをどう活かせるのかを明確に表現すること。「御社の将来性に魅力」などというありきたりの言葉や、「ヤル気は誰にも負けません」などの具体性のない表現だけでは、かえってマイナスになる。志望動機欄は採用担当者に、「この人と会ってみたい」「仕事を任せられそうだ」と感じてもらえれば成功。次の手順に沿って、より具体的で“効く”志望動機をまとめよう!

1:仕事に対する自分の経験・考え方を整理

これまでの仕事の経験
□一番長く経験したのはどんな職種だったか?
□喜びや感動を覚えたのはどんな仕事内容だったか?
□「これは人に負けない」と思える仕事の得意分野は何か?
□今までに得た資格や技術で、自分に合っていると思ったものは?
□仕事上で人から褒められた(評価された)のはどんなとき?

仕事以外の経験
□いちばん楽しいと思えるのは何をしているときか?
□「これは人に負けない」と思える趣味や特技は何か?
□これまでで一番感動したこと、思い出深いことは?
□出会った人の中で刺激を受けたのはどのような人物か?
□自分にはどんな人脈があるか?

募集人材と自分の接点
□これまでどんな業種、職種でどんな経験を積んできたか?
□持っている資格や技術、また今勉強していることは何か?

長所は何か
□仕事で自分の性格がどんな時に発揮されたか?
□社会に出てから改善したと思われる短所はどんなところか?

2:応募企業の研究

なぜその企業でなければならないかを、多角的な情報から分析しよう

3:応募企業と自分との接点を把握

ここまでできたら「企業が求める人材と自分にどんな共通点があるか」を探そう。仕事に活かせる資格やスキルがあるかなど、その企業にどんな形で貢献できるか具体的なストーリーをつくっておく。次に、短所を踏まえた上で「長所を言える」ようにしておきたい。

4:動機を150文字でまとめ

市販の履歴書のスペースは、30文字×5行程度。まずは原稿用紙で下書きを繰り返し、満足ゆく内容になったら履歴書に清書をしよう。

志望動機の書き方例

転職のケースによる書き方例

CASE-1:フリーターから正社員をめざす場合

大学卒業時、希望する編集者での正社員募集はありませんでした。どうしても編集の仕事に就きたかったので就職はせず、書店で販売のアルバイトを2年間続けてきました。その間多くの本に接し、本を作るという仕事への興味と情熱がさらに強まりました。今回、御社の募集広告を拝見し、ようやくめざす仕事に挑戦できると思い応募しました。
【解説】アルバイトやパートの経験しかない場合、人事担当者が真っ先に思うのは「なぜ正社員にならなかったのか」「なぜいま正社員になりたいのか」という疑問や不安だ。これらの「?」を解消するためには、人事担当者が納得するような正当な理由を書くことが第一。「子どもが生まれるので、安定した生活基盤をつくりたい」というのも、立派な動機になる。ただし「正社員であれば何でもいい」というような書き方はNG。できればこのケースのように、自分の夢や希望と応募企業との接点を見出し、ぜひとも働きたいという意気込みをアピールしたい。

CASE-2:同じ業界で営業→営業へ転職する場合

「モノを売るだけではなく顧客の経営的課題を共に考え、その解決手段を提案する」という御社の営業方針に共感を覚えました。7年間、コンピュータ関連の販売会社で営業を担当しましたので、その分野の製品知識とノウハウを現場で活かす自信があります。お客様に喜ばれる営業活動を展開し、御社の発展に貢献できればと思います。
【解説】これまでのキャリアを活かして転職する場合は、自分の経験をどう活かせるか具体的に挙げて即戦力をアピールすることが必要。この場合、同じ分野の営業で7年間培ったキャリアは応募者の最大の武器。強調すべきポイントだ。さらに応募先がどんな企業なのかを研究し、営業理念を把握している点も評価したい。転職に対する熱意を印象づけるだけでなく、他の応募者との差別化が図れる。また本人とその企業の仕事観が一致するというひと言を添えることで、応募理由に説得力が加わった。入社後のビジョンを明確にすることも、好感度アップにつながる。

CASE-3:事務職から未経験の技術職をめざす場合

3年間、建築会社の総務課でOA機器を使った文書作成、伝票整理などを担当してきました。職場で図面と身近に接しているうちにCADオペレーターへの興味が深まり、働きながら夜間のスクールに3カ月間通いました。今後も意欲的にスキルアップを続けながら、平面から空間を生みだすCADオペレーターの仕事に挑戦したいと思います。
【解説】未経験の職種や業種にチャンレンジする場合、経験者に混じっての厳しい競争が待ちかまえている。それを勝ち抜くには、次のポイントを押さえることがコツ。まず、なぜその仕事に興味を持ったのか。例えばきっかけとなった本や知人の存在など、人事担当者が納得する動機を簡潔にまとめよう。次に大切なのは、希望する仕事のどこに魅力を感じているのか。この場合、「平面から空間を生みだす」という言葉で表現している。3つ目は、未経験のハンデを埋めるためにどんな努力をしてきたのか。学んできたことや資格取得など、できるだけ具体的に書こう。

CASE-4:転職回数が多い場合

自分の可能性に挑戦したいと思い、これまで注文住宅の営業、OA機器の営業など、さまざまな業務を経験してきました。これらの仕事で培ったノウハウを、企業が抱える経営上の問題を解決する貴社の営業活動に活かす自信があります。今後は顧客の良きビジネスパートナーとしてお役に立てるよう、じっくりと腰を据えて仕事に取り組みます。
【解説】欧米ではキャリアアップの証明になる転職回数の多さが、日本ではまだマイナス評価につながりがちだ。ここでは転職の言い訳を書くよりも、「転職回数が多い」=「さまざまな会社において多様なノウハウを学んだ」というプラス面に変えてアピールするほうが得策。確かに守備範囲の広い人材は歓迎されるが、それはあくまで専門的な能力があってこそ。それを見極めたうえで、自分が「何ができ、何をしたいのか」を具体的に示そう。また採用担当者の不安を払拭するためにも、「今度こそ腰を落ちつけて働きたい」という意思を書き添えるのも忘れずに。

より具体的な志望動機を書くための5W1H

志望動機欄はいかに自分をアピールできるかが勝負。伝えたいことを150文字前後で言い切るのは、テクニック的にもなかなか難しい。とくに文章をまとめるのが苦手な人にとっては、履歴書の一番の難関かもしれない。そこで活用したいのが「5W1H」のルール。このルールに沿ってそれぞれの要素を組み立てていくと、より具体的で分かりやすい文章に近づける。「5W1H」を志望動機の視点から考えると下のようになる。このルールで文章をまとめてみよう。

WHO(誰が)/自分が(省略する場合が多い)
WHAT(何を)/キャリアや実績、自己啓発など
WHEN(いつ)/○○年間、学生時代など
WHERE(どこで)/職場や学校など
WHY(なぜ)/○○の経験を活かせる、○○に挑戦したい、○○が好き
HOW(どのように)/経験を活かして、○○をめざして
サンプル文
(私は)人と接することが好きなので、販売職を希望します。これまで5年間、食品販売会社で営業アシスタントとしてスタッフのスケジュール管理や商品管理、OA機器を使った文書作成、伝票整理などを担当してきました。未経験の仕事ですが、仕入れ管理、売り上げ集計などの管理業務に前職の経験を活かせると思います。
【解説】言いたいことに、無理やり5W1Hを押し込める必要はない。逆にこだわるあまり、ダラダラと長い文章にならないように気をつけたい。文末は「です」「ます」がおすすめ。「である」を多用すると、押し付けがましい印象になる。書き終えたら、少し時間をおいて音読したり、家族や友達に読んでもらおう。誤字や意味の通じない部分が分かり、ミスを未然に防げる。