注目企業のトップに聞くin北海道 目指すは日本一のブランド豚!猪突猛進で挑む、家業の6次産業化。【株式会社猪野毛ファーム】

2026年8月10日 公開

競走馬の健康管理に使われる酵素液を使うことで、安全かつおいしい肉質を実現した新ひだか町発のブランド豚「健酵豚(けんこうとん)」。父が育てたこの豚を加工・販売する事業を立ち上げ、更に発信拠点として飲食店の開業や販路拡大に奔走しているのが猪野毛優作さんだ。おいしさに秘められた背景や思いを伺った。
代表取締役/猪野毛 優作さん
新ひだか町出身。札幌の大学卒業後、道内銀行に就職。法人営業や経営者向けの金融商品を担当。2017年に家業を継ぐ決心で帰郷。2025年、しゃぶしゃぶ専門店「豚しゃぶ 火影(ほかげ)」オープンと同時に株式会社猪野毛ファームを創業した。

家族を困惑させた
長男の一大決心。

優作さんの実家は新ひだか町で養豚と稲作を営む農家。「健酵豚」は2012年に父・哲次さんが確立したブランド豚で、競走馬用の酵素液を飼料に取り入れることで豚の腸内環境を整え、薬剤に頼らない健康でおいしい豚を育てることに成功した。
一方の優作さんは後継を意識したことはなく、札幌の大学で経済を学んだ後、銀行に入行。法人営業や経営者の個人融資業務を担当していた。しかし多くの経営者と接する中で自らも経営に携わりたいという願望が芽生え、26歳で実家に戻る決意を固めた。
「『健酵豚』はよく実家から送られてきていて、他の市販品とはひと味違うと感じていました。ある時、友達に振る舞ってみると、みんなが『おいしい』と言ってくれたことをきっかけに、このブランドをより多くの人に広めたいと思ったんです」
一念発起して後継を申し出た優作さんだったが、父の哲次さんにしてみれば予想外の出来事。
「継ぐ気のなかった息子が突然戻ってきた揚げ句、『仕事を辞めた』『働かせてくれ』と言うのですから父は困惑したようです。農園も僕が継がないことを想定して縮小していたので、いい迷惑だったと思います(笑)。結局『給料は出せない』と言われたので、父親の下で養豚を学びながら他の牧場でアルバイトをすることになりました」

自分の可能性探しから
見据えた6次産業化。

養豚を学びながら「自分にできることはないか」と模索し続けた優作さん。注目したのが豚肉を育てた後の工程だった。
「『健酵豚』の肥育は父がほぼ一人で行っていたこともあり、販売や加工までには手が回らず、知人だけを頼りに行っている状態でした。折しもコロナ禍でしたので、ECサイトを立ち上げてみたところ想定以上に豚肉が売れたんです。次に加工も自分でやってみようと、空き家を購入してDIYで加工場を作り、最低限の設備で加工を始めてみました」
事業の立ち上げは、家業の承継ではなくあえて農場から独立した形を取っている。
「個人事業主である父が育てた豚を、また別の事業主である息子が加工・販売するという、ちょっと不思議な構図なんです(笑)。というのも、独立したほうが自分の希望を実現しやすいこと、『農業』と『商業』を分けることでコストや売上の管理をしやすいというメリットに加えて、親子だからこそ生じてしまう衝突をできるだけ避けたい個人的な思いもありました」

飲食店を通じて発信。
目指すは全国ブランド。

2025年には自社ブランドの発信拠点として、しゃぶしゃぶ専門店「豚しゃぶ 火影(ほかげ)」を新ひだか町にオープンした。
「ブランド豚はそうでない豚と比較した時に、どうしても価格が高くなってしまいます。まずは地元の方に、もっと気軽に食べてほしいという思いから、自分で飲食店を始めようと思い至りました。『健酵豚』は、しゃぶしゃぶにした時にあくが極めて少なく、本来の味わいや香りが楽しめるのが特徴です。この味が地域ブランドとしてお土産や贈答品に選ばれ、そこから新たなつながりが生まれることを期待しています」
開業と時を同じくして「株式会社猪野毛ファーム」として法人化。見据えているのは生産から加工、販売までを一本化した「6次産業化」だ。
「今はしゃぶしゃぶでは使用しない部位の流通に焦点を当てて、ハンバーグなどの加工品を開発したり、町外の方にも豚肉の魅力を広めるためにSNSでの発信も強化しています。いずれ札幌への出店も目指していますし、若者の働き場所の少ない新ひだか町で新たな雇用も生み出していきたいです。豚肉生産の勉強もしなければなりませんし、日本一のブランド豚を目指して、とにかく手探りでも挑戦していくしかないと思っています」

株式会社猪野毛ファーム

2025年、新ひだか町にて創業。父・哲次さんがブランド化した「健酵豚」の加工・流通・販売を担う他、しゃぶしゃぶ専門店「豚しゃぶ 火影(ほかげ)」を運営している。
日高郡新ひだか町三石歌笛578-2

https://gs-inoke.jp
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。

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