26才のころ、地ビールの製造システムを提供する商社に務めていて、カナダのバンクーバーでビール造りを学ぶことになったんです。そのとき、同じくビール好きの学生時代からの友人にも声を掛け、二人で半年間、カナダに行きました。
カナダでの生活は醸造所のスタッフとしてビール造りを学びながら、朝から晩までずっとビール造りの日々。言葉の壁があったので早く技術を覚えたかったこともあり、僕らは現場の醸造技師に発酵期間の日数や原材料の量など、数字的なことばかり聞いていたんです。すると、ある日ですね「お前たちは何を学びにきたんだ。ビール造りは数学じゃない、アートなんだぞ!」って醸造技師が怒りだしたんです。怒られながらもプライドの溢れるその言葉に感動しましたね。その醸造技師が言った気持ちを今は本当に理解できるんです。
そして帰国後、起業を志している2人と出会い、お互いビール好きなことからすっかり意気投合。お互いの夢を語り合ううちに、じゃあ4人で地ビール会社を設立しよう!となって。そこから話しは急展開でした。みんなでビールを飲みながら作戦会議の日々。僕ら二人は醸造技師、営業や経理は後の二人と分担すること、お客様に地ビール造り体験もできる施設としてオリジナリティーを持たせることなど、どんどん計画はまとまり、2002年に有限会社 カナディアンブルワリー』を設立。その翌年には札幌の東区に地ビール工房とビアホールを併設した『手づくり麦酒』をオープンしました。
「好き」がきっかけでビールと携わり、人とタイミングにも恵まれここまできましたが、まだまだこれからです。いつも思うのは、僕らが美味しいと信じるビールをたくさんの人に知ってほしい。これに尽きるんですね。今は、二人の醸造技師でほとんど手作業で行っているため、醸造にかかる時間に比べ、生産できる量は限られていますが、今後はこの状況をクリアするべく、第二プラントを新たに設けようと計画中です。そしてゆくゆくは、6種類のレギュラー商品をつくり、定番から個性的な味まで幅広いビールを揃えたい。実現したいことは本当にたくさんあります。
ビールの発酵のメカニズム自体はそれほど難しいものではありません。しっかりした衛生管理のもと、クオリティを高め、味の追求を続けることが醍醐味。理想の味を実現できても、感動はその一度きり。次の瞬間には、もっと美味しい味を求めてるんです。もうこれはきりがない(笑)。満足しないから続けられるんじゃないかなって思います。今こうして振り返ると、何ごとも新たな一歩を踏み出すには勇気が必要ですが、大切なのはその先、続けることにあると実感しています。あとはいかに惚れ込むか。この仕事が適職かどうかはわからないけど、天職だと思ってますよ!

[プロフィール]
有限会社カナディアンブルワリー
取締役 醸造技師
堤野 貴之さん(32才)
1975年、札幌市生まれ。大学を卒業後、メガネの販売会社に1年間務め、地ビール商社に転職。そこからビール道にのめり込むことに。ビールのほかに好きなものはサッカー。学生時代チームをつくっていたが、今はサッカーを楽しむ時間がないほど、ビール造りに励んでいる。


有限会社カナディアンブルワリー
札幌市東区北26条東1丁目3-8
TEL:011-752-2550
<体験工房 手づくり麦酒>
11:00〜23:00(要予約)
<ビアホール 手づくり麦酒>
17:00〜23:00






